順天堂大学医学部卒業。国立病院機構東京医療センターでの研修を経て、大手美容外科に勤務。2017年9月に『プライベートクリニック 高田馬場』を開院。
アフターピルとは、何らかの原因で望まない妊娠の可能性がある女性に対し、妊娠を回避するために性交渉後に飲んでもらう薬のことです。
しかし、非常にデリケートな問題であることから、いつまでに飲めばいいのか、どこで購入できるのかなど、意外と知られていないことも多い薬です。
この記事では、アフターピルをいつまでに飲むべきか、起こる可能性のある副作用、すぐに購入したいときの方法などをご紹介します。
目次
アフターピルとは、避妊に失敗した時や性被害にあったとき、女性が72時間以内に服薬することで95%以上の確率で妊娠を防ぐことができる「緊急避妊薬」です。
妊娠の成立そのものを阻害する薬剤ですから、人工妊娠中絶とは根本的に作用機序が異なります。また、万が一アフターピルの服用後に妊娠が成立してしまった場合でも、胎児への影響はないとされています。
日本で認可されているアフターピルでは性行為から72時間以内に1錠を服用しますが、飲むのが早ければ早いほど効果が高く、12時間以内に服用すれば99%以上の確率で避妊できることがわかっています。
保険適応とならないため価格は医療機関によってさまざまですが、だいたい15,000円程度が相場となっています。
以前は、中用量ピルを2錠飲み、さらにその12時間後に追加で2錠服用する「ヤッペ法」と呼ばれる方法が使われていました。しかし、この方法は約半数の人に吐き気や嘔吐などの副作用が現れていた上に、避妊率も現在のものと比較すると低いことがわかっています。
アフターピルは、吐き気や嘔吐などの副作用の起こる確率が低いだけでなく、1回1錠飲むだけで効果が得られる簡便で効果の高い優れた薬剤です。
排卵前であれば、排卵を遅らせて受精そのものを阻害し、排卵後では受精を防ぐことはできませんが、受精卵が子宮に着床するのを阻害することで妊娠を防ぐことができます。
避妊の失敗からアフターピル(ノルレボ)を飲むまでの時間と妊娠率は以下の通りです。
このように、ノルレボは早く飲めば飲むほど避妊効果が高く、72時間以内でも95%以上の確率で避妊効果が期待できます。つまり、3日以内に服用すれば、妊娠のリスクを大きく下げることができるということです。
また、72時間以降120時間以内(5日以内)の服用でも効果がないわけではありません。72時間以内よりも有効率は下がりますが、120時間以内に服用することで63%程度の妊娠阻止率があることがわかっています。
また、クリニックによっては120時間以内の内服で98%の避妊効果が期待できる最新のアフターピルを取り扱っているところもありますので、詳細は各クリニックに問い合わせてみてください。
アフターピルには排卵を抑える効果があるため、妊娠阻止に成功すれば月経が起こります。また、ほとんどの女性ではアフターピルを服用して3日目以降から消退出血という出血が起こり、2〜3日程度続きます。
この出血は月経による出血とは違いますが、消退出血が起これば妊娠の心配はほとんどないと考えられるため、緊急避妊が成功したという「一種の目安」ととらえることができるでしょう。
ただし、まれに消退出血が起こらない人もいますし、消退出血ではなく単なる不正出血である可能性も否定できません。
つまり、アフターピルを服用した数日後に出血が起こっていても、それが消退出血であるとは限らないため、出血が100%避妊成功の合図ではないことは念頭に置いておくようにしてください。
確実に避妊に成功したと言えるのは、次の月経が来てからです。
通常、女性は25日から38日程度の一定周期で月経を繰り返しているため、月経不順の人を除き、アフターピルを飲んだ後、どのくらいの間隔で次の月経が来るかどうかは予測できます。
ただ、アフターピルを飲むことで月経周期は10日前後ずれることもあるので、その辺は注意しましょう。
アフターピルの服用で月経がずれる場合、月経のタイミングは予定よりも早まることが多いです。ただ、遅くなることがないわけではありませんので、遅くなった場合でもあまり不安にならないようにしてください。
繰り返しになりますがアフターピルの避妊成功率は非常に高く、正しく服用できていれば妊娠のリスクは低いです。月経が遅れる可能性も含め、予定日よりも10日程度経つまでは慌てず騒がず、様子を見ておくようにしましょう。
もし、本当にごくまれな場合ですが、予定日よりも10日を過ぎても月経が起こらないときは、妊娠してしまった可能性も考えられます。
月経予定日から10日〜2週間程度経っても月経が起こらない場合は、早めに医療機関を受診して検査を受けましょう。
ノルレボの副作用としては、以下のようなことが指摘されています。
吐き気や嘔吐の症状が出た場合は少し注意が必要です。
というのも、服用後2時間以内に嘔吐してしまった場合は、薬の効果を得る前に吐いてしまっていることになるため、充分な効果が得られないからです。
服用後2時間以内は簡単に吐かないよう、少し我慢しておくようにしてください。
服用後2時間以上経っていれば、薬の成分は体内に充分吸収され、嘔吐しても効果に差はないとされていますので、服用後2時間以上経ってからの嘔吐であれば心配はありません。
そのほか、乳房の張りや頭痛、めまい、疲労感などが副作用として現れることもありますが、いずれも重症化することはありませんし、服用したからといってすぐに月経が起こるわけではありませんので、消退出血がすぐに止まってしまっても、妊娠したかもと必要以上に心配する必要はありません。
服用する際は、用法・用量を必ず守りましょう。心配だからと勝手に量を増やしたり、他の避妊薬を自己判断で追加で飲むことは絶対にしてはいけません。
アフターピルは一般のドラッグストアなどで市販されていないため、病院を受診して医師に処方を受ける必要があります。
一般的に産婦人科を受診することが多いですが、内科など産科・婦人科に関係ない診療科であっても、医師がアフターピルについての知識を持っている場合、処方できることもあります。アフターピルが必要な場合は、事前に処方可能なところを調べておくと良いでしょう。
また、アフターピルを必要とする人の背景はさまざまで、診察で詳細を話しにくいという人も少なくないことから、問診だけで処方箋を出してもらえる病院も多くあります。
アフターピルは性交渉後、72時間以内に服用しなくてはならない緊急性の高い薬なので、話したくないからと諦めず、問診だけで処方してくれる病院を選ぶなどして一刻も早く処方を受けることが重要です。
アフターピルの処方を受けるために病院に行くのが嫌だからと、個人輸入でインターネットで購入する人もいるようですが、これは絶対にやめましょう。
個人輸入代行で購入する薬は本物とは限りません。本物に似せて作られた偽造薬だった場合、有効成分が含まれていない、不純物が含まれているなど、効果がないだけでなく人体に有害なものが混ざっていることがあります。
すぐに病院に行くのが難しいという人はオンライン診療による処方がおすすめです。
オンライン診療であれば、スマホやPCを通じて医師とやりとりできますし、オンラインで処方を受けることができれば、緊急性かつ秘匿性の高いデリケートなこの問題にも十分に対応することができます。
アフターケアもスマホを通じて医師とやりとりすることができますので、いざというときのために、こうしたオンライン診療やオンライン処方に対応してくれる病院を覚えておきましょう。スマホのブックマークやお気に入りなどに登録しておくと安心ですね。
現在、日本でメインに使われているアフターピルは、性交渉後72時間以内の服用で95%以上の避妊率を誇る効果の高い薬剤です。72時間以降120時間以内でも効果は下がりますが、全くないというわけでもありませんので、遅くなってしまった場合でも諦めずに服用してみましょう。
また、アフターピルは緊急に服用する必要がある薬です。望まない妊娠を避けるためにも、念のためにスマホにブックマークなどをしておくようにしてくださいね。