低用量ピルは女性ホルモンの「エストロゲン」と「プロゲステロン」が含有されたお薬です。
主に月経困難症などの生理のトラブルや避妊目的に使用されることが多く、その他にも美肌効果や生理周期をコントロールすることも出来ます。
『ホルモン剤』という言葉が一人歩きすると少し心配な気持ちになられる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、ピルは女性が健やかに美しく生活する強い味方です。
しかし、低用量ピルを服用することによる副作用を気にされる方も多いのではないでしょうか?
日本では低用量ピルの使用率が1-3%程度と世界平均の19.2%、ヨーロッパ諸国の40%と比較すると非常に低いことが知られています(※参考1)。
日本以外の国では処方箋が不要でドラッグストアで購入できる国も多く(※参考2)、日本がいかに低用量ピル後進国であるかが顕著です。
そのため、副作用含めどのようなことを注意して低用量ピルを服用すればよいかわからないのも当然です。
そこでこの記事では、低用量ピルの副作用・服用の注意点について、プライベートクリニック院長の鏡原が解説していきます。
順天堂大学医学部卒業。国立病院機構東京医療センターでの研修を経て、大手美容外科に勤務。2017年9月に『プライベートクリニック 高田馬場』を開院。
なお、低用量ピルには様々な種類があり、種類によって細かい副作用は変わってきます。
低用量ピルの種類については、以下の記事も合わせて参考にしてみてください。
正しい知識を持って低用量ピルを使えば、何も怖いことはありません。
副作用や注意点を理解して、正しく安心してお使いください。
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目次
それでは、さっそく低用量ピルの副作用と注意すべき点について見ていきましょう。
ピルを内服する上で最も気をつけなければならないのが『血栓症』です。
血栓症とは、血管の中で血の塊ができて血管を詰まらせてしまう病気の総称です。
詰まる血管によって症状は様々で、一例としては以下の症状があります。
上記のように多様な症状があり得る血栓症ですが、共通して言えるのは【突然・急に】発症することです。
もしピルの使用中に【突然・急に】身体に異変が起きた時は血栓症を疑い、すぐに救急外来を受診してください。
それでは、ピルを内服中の血栓症のリスクはどの程度あるのでしょうか?
低用量ピルを服用している方としていない方を比較すると以下の通りです。
これだけ見るとリスクが倍増しているように見えます。
しかし、実は女性は妊娠すると1万人に20-50人ほどが血栓症を発症すると言われています。
つまり、血栓症リスクという観点から言えば、ピルを内服することよりも妊娠することの方がハイリスクと言えるわけです。
また、死亡するリスクについても見てみましょう。
低用量ピルを服用して血栓症で死亡するリスクと交通事故で死亡するリスクを比較すると、以下の通りです。
「血栓症のリスクを考慮してピルを使用しない」という判断は「交通事故で死ぬのが怖いので車に乗らない」と同程度かそれ以上に心配性な判断という考え方ができるわけです。
車に乗らないのではなく、事故を起こさないように安全に適切に使用することが車もピルも大切です。
もちろん、リスクはしっかりと理解する必要はあります。
ですが、過度に心配する必要はないことが分かっていただけるかと思います。
血栓症は以下のような要因によって、より引き起こしやすくなります。
リスク因子 | 詳細・理由 |
喫煙 | 特に35才以上かつ1日15本以上の喫煙者は、ハイリスク郡に該当するため低用量ピルの使用は推奨されません。 |
前兆のある偏頭痛 | 頭が痛くなる前に「チカチカ眩しい」(閃輝暗点)や手足が痺れるなどの前兆を伴う偏頭痛の既往のある方は、脳血管の血栓症リスクが高くなると言われており、低用量ピルの使用は推奨されません。 |
肥満 | BMIという体重を身長で2回割った値が30を超えると血栓症リスクが高くなると言われています(例えば体重50kg身長1.5mの方だと 50÷1.5÷1.5=22.22)。 ご自身のBMIが30を超えている方はダイエットをしてから、超えそうな方は30を超えないようにピルを使用する必要があります。 |
年齢 | 40才以上の方は血栓症のリスクから低用量ピルの使用は推奨されていません。 |
上記のような方には、ミニピルがオススメです。
ミニピルの詳細は以下の記事を参考にしてみてください。
結論から言うと、年に1度の健康診断を確実に受けていただくことが大切です。
特に『凝固機能検査』と呼ばれる血液検査を処方のたびに必要以上に行うクリニックが散見されます。ですが、凝固機能検査を行っても血栓症リスクは判断できず、ピル処方のガイドラインでも推奨されておりません。
健康診断で生活習慣病がないかを確実に確認するようにしましょう。
ピルの内服を開始すると吐き気や頭痛といったホルモン剤特有の副作用を認めることがあります。
頻度は多いものの症状は軽いことがほとんどで、使用を継続する間に自然改善するケースが多いです。
ただし、稀にピルとの相性が合わず、使い続けていても改善しないこともあります。
その場合、2シートを目安に、吐き気・頭痛が続くようであれば使用は中断し他の種類のピルの使用も検討してみてください。
また、日常生活に差し支えがあるほどの吐き気や頭痛の場合は、むしろピルが原因ではなく別の要因も考えられるので医療機関を受診されるようにお願いします。
ピル内服中に不正出血を起こすこともしばしばあります。
特に使用開始直後、生理当日や生理が終わっていない日からスタートすると出血が続くことがあります。
これ自体は特に心配する必要はありません
しかし、2シート目・3シート目と続く場合は、ピル以外に原因(性感染症など)がある可能性もあるので婦人科を受診していただくことを推奨しています。
子宮頸がんや乳がんは、エストロゲンというホルモンに依存して増悪します。
『子宮頸がんのある方』『乳がんのある方』がガンを放置しながらピルの内服を継続をすると悪影響を与える可能性があります。
クリニックによってはこれらの検査を必要以上に行う場合もあります。
ですが、基本的には年に1回の健康診断や市区町村からお知らせのくる婦人科検診のタイミングで健診を行っていただくことがまずは大切です。
ピルを内服していると、避妊効果に過信して性感染症予防を怠ってしまうケースがあります。
特定のパートナーとのみ性行為が行われる場合には性感染症に感染する可能性はありません。
しかし、感染の可能性が少しでもある場合は、性感染症予防の観点からコンドームを使用するようにしましょう。
ここまで低用量ピルの副作用・注意点を細かくお伝えしました。
副作用・注意点の反面、低用量ピルにはメリットがたくさんあります。
メリットとデメリットをしっかり理解した上で適切に使用することがオススメです。
ここでは、低用量ピルのメリット5つを簡単に紹介します。
毎月生理で悩んでいる方はとても多いかと思います。
中でも、
というケースが実はとても多いです。
低用量ピルを使用することで痛みが緩和され、出血量が多く貧血傾向の方はそれも改善します。
生理前の精神的なストレスや倦怠感が緩和されます。
お薬の内服の方法にもよりますが、生理周期が一定でない方は生理周期が整い予定が立てやすくなります。
女性が主体的にバースコントロール(避妊)することができます。
以下のがんは低用量ピルを内服することでリスクが低下すると言われています。
低用量ピルに対する漠然とした不安や心配がある方は多いと思います。
しかし、メリットデメリットをしっかり理解した上で適切に使用することで、多くの方の生活を豊かにしてくれる素晴らしいお薬です。
オンライン診療の普及は低用量ピルの認知拡大と利用の促進に追い風になっていますが、まだまだアクセスしにくい現状があります。
当院では出来るだけわかりやすく、安心してお使いいただけるように公式LINEアカウントから随時有人対応で処方後もフォローアップを行っています。
不明点やご相談があればまずはお気軽にお問合せください。
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